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by bropa

夏の終わりのショートストーリー

【去年とは一味違う夏】

夏休み最後の部活、ということで軽めに終わった真っ昼間。
幼馴染で部活のマネージャーもやっているこいつが『プールに行こう!』と声をかけてきた。
まだ日中とはいえ、部活のあとだ。
面倒くさがって行こうとしない俺に、不満そうにすねた声を上げる。

「この夏の私の水着の見納めなんだからね」
「確かに今年はまだ見てないけど……毎年見ているような気もするが?」
「ふっふ~ん。今年はいつもとは違うんだよ~」
ちっちっち、という仕草で俺の発言をあっさりと否定してくれる。
「何がだよ」
「5センチ」
「は?」
「去年の夏からね、バストが5センチも増えたんだよ♪」
「なっ…」

夏の終わりのショートストーリー_c0098792_1624524.jpg

思わず俺の視線が目の前の少女の特定の部分に行ってしまったことは否定しようが無い。
ニンマリとするこいつの笑顔。
激しく後悔するが、後の祭りだ。…俺の馬鹿。
「どうどう? 見たくない? 去年よりずいぶん成長しちゃったんだよ?」
いかにも嬉しそうに俺に迫ってくる。
その笑顔の眩しさたるや、夏の太陽も真っ青というところか。
「…降参」
「うん?」
「俺の負けです。行きます。一緒に行かせていただきます。ぜひとも水着姿を拝見させてください」
「なんかヤケクソになってない?」
「半分当たりだが、もう半分は本音だ」
こういったことでウソを言っても仕方が無い。
付き合いが長い分、すぐにばれるのがオチだ。
「うふふっ、楽しみにしててねっ♪」
短めのポニーテールをなびかせながら、俺の前でくるりと一回転。
ふわりとひるがえったチェックのスカートや、白いブラウスが眩しく映る。

「ほらほらっ、早くしないとわたしの水着が見られなくなっちゃうよ?」
そのままてってけと先を歩くあいつが振り向いて声をかけてくる。
「やれやれ…」
あいつに振り回されまくったこの夏が、やっぱり最後までそうなったことにため息を漏らす。
ただ、そう悪い気分ではないことも本当のことなのだが。




朝霧様のネタを拝借して一文。

ブタベのオリジナルのお話はどうも男の立場が弱いのが多いようで…なぜなのやら(笑)

by bropa | 2007-09-17 16:28